森の中で一杯

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森の中で一杯

レスター・エルネスト。ジョナサンの父親は、突然ビキビキと空間を割って現れた酔っ払いと息子を目撃することになった。 「次はここだ。島原!酒だ!まだまだ飲むぞ俺は!」 「いきなり現れて周囲の人間の迷惑を考えろ!貴方は、えー」 「いいよ俺の親父だ。友達引き連れてキャンプするって話だ。ゴーマとユキジとマサオってみんな世話になってんだ。森借りるぞ?ここは親父が作った森で、木の品種改良や植林の為の木のストック場所になってるんだ」 「ほう。植木屋勇者か。ちと借りるぞ?お返しにここを生きとし生けるものが誰1人生きては帰れん森に変えてだな」 「変にハデスっぽくすんなって!親父の小屋に行けばバーベキューセットもあるはずだ。確か前の王様の炭火焼きレストランの肉を振る舞ってくれたよ。アースツーでも最高のバーベキュー親父だ」 「おー!じゃあよろしくな?肉焼き勇者オヤジ」 何か、息子が凄い柄の悪い友達連れて来たって感じがした。 あっという間に、レスターの城はおっさん達に占領されていった。 「レスターだっけ?俺達とまあ大体同年代だろう。飲め!ジョナサン焼け!島原は皿な!箸はどこ行った?!」 ロマネ・コンティをラッパ飲みした偉そうなおっさんは言った。 「ちょっと待っとけゴーマ!あ!スモークチップがある!ちょっともらうぞ親父!イースト・ファームのチーズ庫が地下にあったし!スモークチーズにスモークグマだ!ほい!これ食って待ってろよ!」 いきなり火が着いたコンロに島原が肉を並べた。 「おい。チーズ庫は俺の秘蔵の。トーストにトロットロに溶けたチーズにハム乗っけたのがどんだけ美味いのか。ってのがあって」 父親の口惜しさを汲む人間は1人もいなかった。 「ホントに便利な勇者だな。一家に一台欲しい。1日1万で雇おう。1月30万だいい稼ぎだろう。家の掃除も含めて頑張れジョナサン。三田村さんと仲良くな」 「月3000ループでこき使う気かお前は!」 ホントに情け容赦なく、父親が秘蔵していたチーズを皿に出して言った。 「ループって、魔王が作った貨幣価値だろうが。まんま円だぞ?いずれ1ループ1円になる。今の内に円貯めとけ。チーズお代わり!これ美味いカッテージチーズだな!イースト・ファームって田舎だろう?ああひまわりの実家か。こっちの食料事情を垣間見とく価値はあるんじゃないか?俺国会議員だったし確か」 「へーえ。あんた偉いんだな。酒美味いし。これ幾らするんだ?」 飲み慣れないアースワンの高級ワインで急速にレスターは酔っぱらっていた。 チーズに関してはどうにでもなれと思っていた。 「値段か。幾らだろうな気にしたことないし。まあ、コンビニで買えるんじゃないか?」 「ロマネ・コンティがコンビニで買えるものか!これ見よがしに年代物ばかり!今日お前が飲んだ分で家が1軒建つぞ!」 「そうか?じゃあこっちは?」 「コニャックにクリュグは俺が飲んでるんだ!正男さん飲んでるのか?!」 「飲んでるよ雪さんよ!普段は大人しいくせに勘解由小路と飲むとこうなるんだ!がぶ飲みすんなって勘解由小路!付き合わされる身になって考えろ!」 「まあそんなこんなで全員見事にベロベロになっている。ここにある酒好きに飲んでいいぞ。チーズも弁償しとく。期待して待ってろよレスター」 どうでもいいけど誰に話しかけてんだ? 「倅よ。ここにいるのはただの酔っ払いの集団だぞ?お前も含めて」 「放っとけってだからあああああ!こいつ等凄いしょうもないけど神とその一党だから!」 「どうでもいいけど、フランチェスカちゃんが探してたぞ?ジュニアの弟か妹作る気満々だぞ?まあメグメグは今妊娠3ヶ月でプリムがベッタリで」 か、母さんはともかくとしてフラさんそこまで? ああ。さっきの写メのフラ尻が。 あの染みは俺を欲してるって。 あのパンツをずり下ろして尻にむしゃぶり付きたい♡ そして、やっぱりジョナサンは酔っ払いに囲まれていた。 「あああああああああああああうああわ!」 「だから、エロは禁止だってこのポンコツは。そうだろう花京院」 「誤植の悲鳴がテンプレ化してんな。この裏切り者は」 「勘解由小路。お前、ここに来る途中死んだリスを見つけていたろう」 何このおっさん達。自分がエロになれないからって。 「とりあえずあれだな。こいつを死んだシマリスに変えてみるか」 「嫌あああああああああああああああ!」 ジョナサンは悲鳴を上げ、父親はゴーマのテーブルから美味そうなワインを探すのに集中していた。 その時、巨大な破壊が、森の一部を吹き飛ばした。 言葉を失ったジョナサン親子。 勘解由小路は平然と言った。 「ジョナ嫁おっぱいか。どっこいこの辺は俺の張った結界が」 更に巨大な破壊があった。 森の残りを消滅させた、白銀の龍の両目が光輝き、その肩の上に、二の腕を発光させた娘の姿があった。 「エメルダとーー銀龍か?」 「一魔の奴。厄介なもの作ったな」 忌々しそうに勘解由小路は呟いた。 うっかり魔王でなく一魔と言ってしまっていたが、誰も聞いていなかった。 「ここも駄目か。さて、次はどこに行こうか?まあいいや。行くぞジョナサン」 ゴーズシャっと銀龍が降り立った時、もうそこには酔っ払いはいなかった。 残ったワインボトルを抱えたレスターが、 「森が。俺が育てた植物が」 息子を放っぽって、父親はそう言った。
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