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やはりですか。
女達の首魁の位置にいた真琴が言った。
「ええ。取って置きのエアーバッシュで森を吹っ飛ばしたんだけど」
エアーバッシュは、数少ないフランチェスカの遠距離魔法攻撃手段だった。
二重展開された威力はご覧の通り。森の半分が、圧縮された空気の破裂で薙ぎ倒されていた。
「前に差し上げた聖盾アイギスは、攻撃には使えませんから」
「木とジョナサンを挟んで押し潰すのは出来るんだけどね。逃げる夫はペシャンコよ」
どんだけ好戦的なのか。って話だった。
「そうですね。私もお腹が減ってきました。食事を摂って追跡を再開しましょう。あら?まあ!降魔さんが私達の為にお肉を!そちらの管理人の方。焼いてくださいね」
「彼、うちの人の父親よ?」
レスターは大体解っていた。文句言わずに肉を焼いていることからも、誰に逆らったらどうなるのか、本能で理解していた。
「では、仙桃酒で乾杯しましょう」
「エメルダもお疲れ様。仙桃酒は好き?妊娠中も飲めるお酒よ」
「最近マリルカはそれしか飲んでないし」
薙ぎ散らされ、消滅した森だった場所で、穏やかな女だけの空間があった。
「しかし得心が行きません。降魔さんは本気で子作りを排除し、お友達とキャンプをしたいと。理解出来ません。健全な夫婦関係は、幸福な子作りによってのみ営まれるというのに」
毒蛇母ちゃんは、要するにやりたがっていた。
真琴の中で、空腹感と性的欲求不満は、完全に不可分だった。胃に食べ物を放り込むように、胎内に満たしたかったようだった。
「自分がしたい時は凄いグイグイ来るくせに、女の気持ちを理解しないなんて許せないわ。伊達に4人も赤ちゃん生んでないのよこっちは。どこまでも追いかけるわよ。女に性欲がないなんて有り得ないもの」
勇者の嫁さんも凄いやりたがっていた。
「おっぱいがムズムズしてきた」
ブラを引っ張って写メを撮っていた勇者の愛人ちゃんにも火が点いていた。
「でも、多分マー君が1番こっちに靡きそうだす。大体週一でしてますたんで。ゴムなしでって言ったら絶対食いついてきます」
肉の横に置いてあったパンケーキを貪りながら発言したのは涼白さんだった。
「涼白さんは、シジミちゃんの先を見据えています。子作りするなら避妊は有り得ません。母親が赤ちゃんを求めているなら、自然発生学的にも男性は応える義務があります」
母ちゃん達のエゴはどこまでも高まっていった。
「今までずっと降魔さんと一緒にいました。まさか逃げるとは。改めて降魔さんを追跡するのは初めてです。行きましょうみなさん。マコマコはどこまでも、どこまでも追います。情報を集めましょう。まずはそこからです」
「あの、飲み物のお代わりは?」
レスターが恐る恐る言い、こちらを見た女達の目は、恐ろしい光を湛えていた。
「「「「仙桃酒を(くじさい)」」」」
異口同音で酒持ってこい。女達はそう言っていた。
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