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正直言って、近づきたくはない。しかし、渦中の青年は、今日に限って護身用の魔導武具を持ってこなかったらしく、完全にやられっぱなし。このままでは、悪ノリした少年達に殺されてしまいそうだ。
ルチルは、腹をくくった。自分もモリオンに拾われなければ、あの青年と同じ立場だったかもしれない。迫害されて、卑下されて、今頃死んでいたかもしれないのだ。
窓を開け放って、大声を張り上げる。
「そこ、何やってるの?!」
少年達は、飛び上がる勢いで一斉にルチルの方を振り向いた。
「げ、お局様だ!」
「やめろよ、それ。先輩方は皆、女神だって崇めてるらしいぞ?!」
「女神なんて、存在しない。あれは、ただの女だ」
少年達とドラブラッド男爵は口々に悪態をつくと、足早にその場を去っていく。きっと、モリオンにも見られたと思いこんで、逃げの一手に絞ったのだろう。
ルチルは、外へ出て青年の元へ向かった。
「大丈夫ですか?」
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