食堂で愚痴

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食堂で愚痴

「触ってほしいなんて、どう考えても変態でしょ?」  お昼休みだ。ルチルは、食堂にいた。きのこたっぷりシチューをがっつきながら、今朝の話をしている。目は完全に死んでいた。ちなみに、シチューが不味いわけではない。貴族も満足する味だ。 「別に無底な真似をされたわけではないのでしょう?」 「えぇ」  長机の向かい側に座り、愚痴を聞いているのはセレナという娘。ルチルの職場の後輩だ。  見た目の可憐さからは考えられない程の力持ちで、近年稀に見る「使える」若い女性である。いつもルチルは心の中で「天使」と呼んでいた。こうして、昼間っから骨付き肉を頬張っていなければ、完璧な儚げ美女だ。  彼女が資材部へやってきたのは三年前。その見た目から、自分よりもかなり年下だとルチルは考えているが、実年齢は分からない。判明しているのは、男爵令嬢だということだけ。
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