悪徳商人来たる

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悪徳商人来たる

 バンデットは、両親と同じ石商人だが、資産のある侯爵家と縁戚にあるらしく、羽振りが良い。それだけならば害は無いのだが、姑息な方法で、ルチルの家と取引きのある発掘者を引き抜くなどの嫌がらせをしていた。  それだけではない。  ルチルの両親は、王都を含め、国の東西南北にある貿易都市にも支店をもつぐらい、手広く商売をしていた。しかし、両親が亡くなった途端、それらとの縁が切れてしまった。いや、切られてしまった。全て、バンデットによって、あっという間に乗っ取られてしまったのだ。もちろん、不法なやり口で。  ルチルは知り合いを頼って、抗議の手紙を出したり、役場に相談したりしたが、どこもバンデットが手を回した後だったため、なしの礫。  しかもルチルには、親の借金の支払い義務だけは遺されていた。商品として取り扱っていた石は高価なものなので、商売柄、そういった資金繰りになるのは仕方がない。けれど、頼みの綱である支店や、そこの従業員までルチルを無視を決め込む態度だったのは、精神的にもかなり辛いものがある。
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