悪徳商人来たる

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 しかし、調子に乗ったバンデットの言動は、さらにエスカレートしていったのだ。 「ここは私のような大商人のもてなし方も知らないらしい。庶民臭くて鼻が曲がる」  これには、さすがのルチルも、堪忍袋の緒が切れるというものだった。  なぜならば、『蔵』の応接室は、王城の中にある貴賓室や王族が使うサロンと比肩できる程の、豪華な内装なのである。さらには、資材部付きの気の利く侍女達が、十分貴族社会に通じる所作でお茶を用意し、もてなしをしている。  というのも、この応接室は、他国の王族がジュウェール王家と商談をするのにも使わられる場所だからだ。これで不満があるなんて、どう考えてもおかしい。国を代表する場所に難癖をつけるなんて、王に唾を吐くのと同義だ。  ルチルは、小さく握った拳を震わせながら、言った。 「分かりました」  その後の行動は早かった。寮のルームメイトであるガーネットは、王女付きの侍女である。急ぎ、使用人専用の石通信で彼女を呼び出し、バンデットに王族さながらの接待をしてもらったのだ。 「王女殿下にもここまでさせていただくことは、滅多にありませんのよ?」
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