悪徳商人来たる

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 コンゴストン。それは、世の中で最も魔力伝達効率と耐久性が高いと言われている石だ。見た目の輝きも素晴らしく、装飾目的や宝物として収集する貴族もいるぐらいである。希少性が高く、バンデットが持ち込んだ原石程に大きなものは、ルチルもこれまでに片手の指程度しか目にしたことがなかった。  このサイズであれば、軍事目的でも、インフラ目的でも、なんだって大きなことができるだろう。ルチルの鼓動は、いつの間にか走った後のように速くなっていた。 「どうだ? この石の価値が分かったか? ならば、早く金を出せ。今すぐ応じるならば、特別に一億ペブルで取引きしてやろう」  城下町の店でいつも買っている、朝ごはん用のパンは、一つ100ペブル。そんな金銭感覚のルチルには、あまりに大きな金額すぎて、妥当なのか判断がつきづらい。  しかし、コンゴストンは国内の市場ではほとんど出回らないものであり、王城の『蔵』としては、この機会に買い上げておくのは一手とも思えた。  ただ、このコンゴストンが本物である証拠は無い。
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