出勤前

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 文官とは名ばかりで、書類仕事よりも力仕事の多い体力勝負な現場。時たま異動してくる若い女の子達は、皆生粋の貴族のご令嬢ばかりで、全く戦力にならなかった。なのに、どこかの誰かに見初められたり、見合いで相思相愛になったりして結婚し、すぐに姿を消していく。  他の子達よりも、真面目にがんばっているはずなのに。十分に不幸を経験して、苦労してきたはずなのに。極端に不細工というわけでもないのに。そろそろ報われてもいい頃合いなのに、ルチルは未だに独りぼっちだ。  いつになれば、誰かに目一杯愛されるという夢を叶えられるのだろうか。  朝食は、昨夜買っておいた硬いパンだ。寮の狭いキッチンでお湯を沸かしてお茶をいれる。それを啜りながら、胸元のペンダントに視点を落とした。  父親の形見である。どう見ても、ただの灰色がかった石ころなのだが、家宝として代々伝わってきたものらしい。  いくらゴミみたいな見た目でも、自分のルーツを感じられる物はほとんど手放してお金に替えてしまったので、これだけは捨てられずにいた。何せ、いつか究極に困った時に願いを叶えてくれるお守りらしいのだ。
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