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夫の前では貞淑で良き妻を演じている上、着飾った若い女はやはり美しい。それ程時間を置かずして、公爵は第二婦人のみを大切にするようになった。
それは、連れ子に対しても同じ。
第二婦人には、ジェットとほぼ年の変わらない息子がいた。彼の名はレドメーヌの言い、公爵からは「レド」という相性で呼ばれて、それはそれは可愛がられるようになった。
こうして、金と若い女、その息子に傾倒していった公爵は、第一夫人と実の息子を蔑ろにし、忘れられた存在に追いやっていったのである。
ジェットの母親が昼間も寝台から起き上がらなくなり、そして息を引き取ったのは、それから一年後のことだった。きっと心労がたたったからなのだろうが、あまりにも早く、あっけない最期だった。
その違和感の答え合わせの機会は、すぐに巡ってきた。
ジェットがある夜、自室に運ばれてきた夕飯を食べていると、スープを飲んだ途端に突然苦しくなり、目の前が真っ暗になって倒れてしまったのである。
目が見えなくなったのは、この時からだ。
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