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ジェットは、幼い頃から石を加工したり、魔導品を作るのが趣味だった。すぐさま、自前の魔導品を引っ張り出し、吐き出した自分の唾液を調べたところ、毒が検出。媒介となっていた石が砂になってしまったので、かなり強い毒だ。
――――このまま、義母と義弟の住む屋敷にいては、遠からず殺されてしまう。
ちょうど、義弟レドメーヌからの執拗な嫌がらせに滅入っていた頃合いだった。レドメーヌは公爵のお気に入りだが、貴族社会においては地位が高くない。公爵家の正式な跡取りは、嫡男であるジェットなのだ。
いよいよ命の危機を悟ったジェットは、別邸に移ることにした。
生前、ジェットの母が一目惚れして購入した湖の前にある別荘。共に本邸を出てきてくれた老人は、第二婦人がやってくる前までは屋敷の執事を務めていた男、サファイはかなり優秀で、元々母の実家からやってきた使用人だ。
信頼の置ける人、場所を取り戻して、ジェットは少しずつ、少しずつ、心の傷を癒やしていった。けれど、名のある医師に診せるなど手を尽くすも虚しく、失った視力は元に戻らなかった。
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