盲目の青年との出会い

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 彼は、先帝の愛人の息子、つまり一応王族の端くれだ。今は、兄王への忠誠の証として一代限りの公爵を賜り、王家の臣下となっている。さらには、誰もがやりたがらない、王宮の端にある部署の長というハズレ役を引き受けているのだった。  これは、モリオンのお人好しな性格にも関係するかもしれない。現に、商人の娘であるルチルを拾って、王宮の文官に据えてしまったのも彼だ。  今も当時も、親の無い子どもが真っ当に生きる道は、ほとんど無い。ルチルは成人したばかりだったが、商人として自立するには若すぎた。確かに王城へ親の遺産を押し売りにやってきた機転は良かったかもしれないが、多少の小銭を稼いだところで、身元がはっきりしない娘にまともな働き口は約束されていない。  そこでモリオンは、ルチルが持ち込んだ商品を快く買い取ると同時に、彼女を試すことにした。なぜならば、言葉の端々から豊富な知識があることが分かっていたし、『蔵』は常に人手不足だったからだ。 「石は、好きか?」  モリオンが尋ねると、ルチルは鼻息荒く大きく頷いた。 「はい。この世で一番、人を助けることのできるものだと思っています」
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