盲目の青年との出会い

3/8
前へ
/81ページ
次へ
 この世で、石は人々の生活を支えるインフラとも言える。  人間は、生まれながらに魔力と呼ばれる見えない波を出すことができるのだが、これは特殊な石という素材を通さない限り、生活に役立つような動力や熱源に変わったりはしない。石なくしては、今は当たり前となっている夜の灯りや遠隔通信、魔導車も使えないのだ。  しかし、石はどこにでもあるわけではない。魔導効率が良く、劣化がしにくい石は、道端に転がっているわけではなく、産地と呼ばれる山奥の危険な場所に行かないと入手できない。  そこで、発掘者と呼ばれる職業が存在し、発掘者から石を買い上げて市場に流通させるのが、石商人だ。ルチルは、両親が石商人であることを誇りに思っていた。誰かの役に立つ仕事というのは、やはり胸が張れる。しかも、専門性が高いため、望めばなれるという職でもないのだ。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加