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「ねえ、警察官さん、遊ぼーよ」
無邪気な笑顔でこう言うが、彼は立てこもりの犯人である。
「…………一般市民を解放してくれるならな」
俺は今、一般市民の人質と交換される人質として、立てこもり現場にいる。俺が自らそうすると言ったのだ。
もう、上に俺の軸を曲げられるのは御免だ。最悪命を落としても問題はない。俺は上から相当嫌われている。
「俺が代わりに人質になる。それで許せ」
ふーん、と珍しい鳥でも見るような目で少年は言った。
「お兄さん、変わってるね。自分の身を呈して誰かを守るんだ」
どこか楽しそうに、少年は言った。
「いーよ。解放したげる」
少年は俺を連れて窓からのりだした。後ろから肩の方に腕を回し、俺のこめかみには拳銃を当てている。
「まあこんな感じで、人質交換したから!」
少年が外にいる警官たちに呼びかける。俺は、人質が無事に警察側の拠点のところまで帰還したのを目視する。
窓を閉めブラインドを下ろし、少年は俺から離れてからソファに腰掛ける。ここは1階が飲食店で、今俺たちがいる2階は法律事務所らしい。上質な革のソファに、デスクやテーブルは雑によけられている。
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