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「人質を交換してよかったのか」 「なに?後悔でもしてる?」 嘲笑うような、どこか強がるような言い方だ。 「いや、有難い限りだが」 「人質は誰でもいいんだよ」 人質になったのは1階の従業員や客数人と、2階の弁護士たちらしい。通報をしたのは少年自身。電話口で「早く来ないと人質の命はないかもよ?」と言いつつ、様子としては殺す気はないらしかった。 「俺を殺したいなら殺せばいいさ。ただ、待ってほしい。話し足りない」 「別にいいけど?俺は人質が欲しかっただけだから、殺すつもりないし」 少し話せばある程度は人間性が見えてくるものだが、この少年の場合はまるで見えない。こいつはいったい何がしたいのか、それが知りたい。 「ま、おおかた人質に危害を加えるわけでもなく、なんのために立てこもってんだ、ってとこでしょ」 「まあ……そんなとこだな」 窓の外は直の上司がなんか言っていた。なんて言ってるかは聞き取れない。俺は防弾ジョッキを脱ぎ捨てた。 「いいの?そんな大事なもの脱いじゃって」 「まあな」 「ふーん」 少年の横に腰掛ける。少年は窓の方向に目を向けた。 「俺、虐待されてたんだよね」 少年が口を開く。
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