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「て言っても、殴られてたわけじゃないよ。居ないことになってる」 俺は黙って聴く。 「居ないから、何を言っても無視される。ご飯もないよ。お小遣いも。でもバレたくないんだろうね。高校卒業までは学費とかきっちり払ってたし、三者面談でも俺を応援してる親だった。先生もそれを疑うことなく親の言を信じてた。クラスメイトに虐められてたけどそれも知らない先生だったし。いや知ってたのかも、まあいいや、その頃の俺は自分の意思を持たない、おとなしくて都合のいい『優等生』だったよ」 「………………」 「今まであたりまえだったし、別に生きていけると思ってたけど………子供の頃に感じた寂しさは忘れられないね。その寂しさを思い出したのはバイトし始めてから」 就活失敗したんだよね、と明るく笑っている。外は先程急に降り出した雨が酷くなっている。 『おい、中は大丈夫なのか、状況を知らせろ』 無線で連絡が入ったが切った。 「ブラックバイトだった。入れるところがそこしかなかったから。自分の意思を無視されるとか、慣れてるはずなのに辛かった。毎日泣いてた。まあ、そしたら泣くな煩いって言われるんだけどね」 「…………………」
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