0人が本棚に入れています
本棚に追加
「で、ある日、わかっちゃったんだよね。親も同級生も先生も、バ先の上司も、みんな、僕の存在なんかあってもなくてもどうでもいいんだなーって」
「……それで立てこもりを?」
「まあそんなとこ。何か大掛かりな事件を起こせば絶対ニュースになる。こんな方法しかわかんない。巻き込んじゃった人質さんにはほんと、申し訳ないことしたなぁって。わかってるんだよ、自分勝手なのは。でもこうすれば、みんな僕を見てくれる。今まで僕を見てくれなかった人たちだって、“犯罪者の関係者”になったら僕を見ざるを得ないでしょ」
「……………そうか……………向けられるものが、軽蔑の目だとわかっていても?」
「……なに?説教したいの?他に方法はなかったのかとかって」
「別に。俺は説教には向いてないし、しようとも思わない。お前の傷に塩を塗りたくるのは趣味じゃない」
「ふーん。まあ、そうね」
少年はどこかすっきりしたように言って笑った。
「変なの。誰にも話したことないのに。お兄さん何かそういうパワーでも持ってんの?」
「持ってない。随分心を許されたもんだな」
少年はへへっ、と笑った。
最初のコメントを投稿しよう!