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うわあああ、と少年は声をあげて泣いた。この大雨だからたぶん外には聞こえていないだろう。俺に抱きつき、背中に手を回し、警官服をぎゅっと握る。後ろから撃たれたり刺されたりするかもしれない。そうなったらその時だ。今は彼を抱きしめてやろう。背中をさすってやろう。そうすることしか、俺にはできないのだ。 すん、と鼻を啜り、ふうと息を吐いた。 「落ち着いたか」 「うん。ごめんなさい」 「別に構わないが。俺に出来るのはそれぐらいしかないから」 「………ありがとう」 少年は笑った。睫毛はまだ涙で濡れている。 「凄いね。『ありがとう』っていう機会ってちゃんとあるんだなぁ」 「まあ、な」 頭を撫でてやる。「子供じゃないんだぞ」と言われるかと思ったが、案外素直に撫でられている。 「やりたいこととか、ないのか?」 質問が唐突すぎた。 「うーん、ないね。何やっても楽しくない。まあ、叶わない希望を言うなら──1度ぐらい、大事にされて、愛されてみたかったなぁ。だからお兄さんが何も言わずに話聞いてくれたのって変な感じもするし、嬉しい気もする。警察って俺のこと、一立てこもり犯ぐらいにしか見てないと思ってた」
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