0人が本棚に入れています
本棚に追加
「だが成長して、わかった。そいつを懲らしめるだけじゃ、何も変わらない。その人間に向き合い現状に向き合わなければ、その犯人やお前を歪めた世界は直らない。そんな世界があり続ける限り、事件を起こそうと思うほど追い詰められる人間は減らないし、事件は減らない」
「だから、警察官に?」
「ああ。この世界を変えたい。そのために人と向き合いたい。警察官になれば、この志が果たせると思った。俺の、人と向き合うという信念を曲げないでいられると思ったんだ。…………どうやら見込み違いだったようだ」
「だからだ」
少年は言った。
「?」
「だから、あんなにお兄さんの腕は優しかったんだ」
最初のコメントを投稿しよう!