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次の日の朝のことは、自分でも読めていた。やはり九時ちょうどにタイムカードを切ると、中谷さんにまたくどくどと叱られた。
「笹ちゃん昨日はごめんね。親戚の結婚式でさー、終わってからも二次会・三次会って」
「……ほんとですよ。めちゃ大変でした」
「そうだよね、すまん! 代わりに今日頑張るから許してよ!」
昨日休んでいた高崎さんは、そう言ってスーツの腕をまくる。昔ラクビーをしていたというだけあって、かなり隆々とした筋肉が朝日に照らされる。腕をまくったのは、ただ見せたかっただけなのかもしれない。
基本、高崎さんは昼出勤のラストまでなのだが、今日は朝から夜までいるらしい。この分なら、私はいつも通りの五、六時上がりが出来そうだ。
「ほら、お客様来たよ。いらっしゃいませ」
中谷さんが言うから高崎さんは、あげたばかりの袖をすぐに下ろす。私も挨拶をと前を向いたら、そこには昨日の男がいた。
(二)
寝て起きて、すっかり忘れていたというのに。コートは昨日と種類こそ違ったが、やっぱり今日も黒系色。髪は昨日より小さくまとまっていて、しめじみたいな頭になっていた。今日は湿度が高かったっけ。
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