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「やめてください、高崎さん。……私、間違っても知り合いにあんな人いません」
そのまま仕事をして、その日は定時の六時に上がった。二日連続のインパクトがあった。昨日とは違って、終わる頃までその男のことが頭に残っていた。
帰りはいつものようにスーパーに寄ろうとしたけれど、男に似たような背格好の人が店内に入って行くのを見かけたら行くのが億劫になった。仕事が終わってまで、万が一にも顔を合わせたくない。その思いがお惣菜欲しさに勝って、寄り道せず家に帰る。
運悪く、ちょうど冷食もインスタントも切らしていた。晩御飯には、残り物の菓子パン二つを食べた。カロリーで言うなら十分だったが、それ以外の点は最悪だった。満腹感もなければ、口の中が過剰に甘ったるくなり吐き気を催した。その口直しに、と飲んだ市販のレモンティーはなおのこと甘い。もはやひどい生理の日の気分だった。無心で水道水を飲んで吐くのを堪えた。
あたたかいお茶でもあればよかったのだけど。あいにくこの家には、そんな気の利いたものはないのだった。
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