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私は花につられて道の端に寄った。その横を、女子高生たちがすり抜けていく。この近くには小さな高校がある。そこの生徒だろうか、と考えながらぼんやり制服の後ろ姿を見送った。本当なら、まだ私もあぁやって学校に行っていた時間だ。もうすぐ始業のチャイムが鳴る。彼女らは、きゃっきゃっと喋りながらも少し急ぎ足だ。同い年くらいのはずなのに彼女らが自分よりずっと若く映る。風になびかせている髪だって、年相応につやつやしている。
私はたとえ遅刻していたとしてもあんな風に、急いだりしなかった。平気な顔をして教室に入った。今振り返ってみても、そういう可愛げが全くない生徒だったと思う。
職場の前まで着くとまだ四十分。今日は中谷さんに小言を言われないかなと思いつつ、裏口に回ろうとして嫌な人物の存在に気づいた。
黒いコートに、今日はつばの広い帽まで。あの男だった。もし客だと知っていなかったら、通報していたかもしれない。
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