吠えない犬

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そんな二人組は、異様な雰囲気を放っていたのだと思う。同じくホームで待っている人からは、奇妙なものを見る視線を感じた。 やっときた電車に乗って、ほんの十分。隣駅で降りる。歩いて向かった方が早かったかもしれない。内見先まではここからおよそ三分だ。駅から離れれば、すぐにみかん畑までひらける道を歩いて一件目の部屋にたどり着いた。 「ここですね。こちらで大家さんに鍵は借りていますので、早速行きましょう」 「はい……あの……!」 「なんでしょうか」 「内見はどれくらいの時間させてもらえるのでしょうか」 「基本はお客様のご自由です」 大家さんに借りてきた鍵を使い扉を開けて、家の中に入る。使っていない家独特のほこりっぽい匂いが奥からむわとした。廊下の電気をつけて、用意してもらったスリッパを男の前に差し出す。男は頭を下げてそれを履いた。 「まずは部屋の案内からいたしましょうか」 「大丈夫です。間取りは見てきたので」 そう言うと男は私より先に、廊下の一番手前の扉の向こうへと入っていく。私もその後ろからついて入った。そこはお風呂場だった。私の家のそれの一・五倍ほどの大きさ。セパレートだけあって、浴槽が広い。
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