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それくらいの時間になって、男はなにやら計算していた手を急に止めて、顔を上げる。
「昼休憩にしませんか」
「はい、構いませんよ。次は何時から再開しますか」
「……二時くらいでどうでしょうか」
「はい。構いません。では、私はここに残っていますので。のちほどまたここに来てください」
「……はい」
男が、洋室から出て行く。
大助かりだった。ようやく単純作業から解放される。大きく息を吸って数秒、そのまま全て吐きだす。集中したから、その分かなり疲れた。
なによりお腹も空いてきていた。管理人さんの好意で貸していただいた折りたたみ椅子を開いて座る。昼ごはんは、チョコレートコロネ。いつも通り菓子パンひとつだ。食べようとしていたら、かばんを忘れていたようで男が部屋に戻ってきた。
「……あの」思いがけず話しかけられる。
「どうかしましたか」
「……いえ。菓子パンですか」
「そうです。昼はいつもこうなんです。えっと、一口いりますか?」
「……結構です」
「では、なにか」
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