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全く意図が読めなかった。なぜ声をかけられたのだろう。分かるのは、ただ目の前で男がもじもじと落ち着かないことだけ。人の心を読むのは苦手だ。自分のことすら分からないのにそんなもの考えたって分かるわけがない、と思っている。一呼吸あってから、
「……それでは健康に悪いのではないですか」男はくぐもった声で言った。
「はぁ、そうかもしれませんけど」
誰に言われなきゃいけないんだ、と内心ひっそり毒づく。ひょろっとした手足、暗い顔を見る。どう考えても私より男の方が不健康そうなのに。
「あの……」
「まだなにかありますでしょうか」
「……ご飯ご一緒にいかがですか」
私はあまりの衝撃に、椅子から落ちそうになった。男はか細い腕ながら、私の体を支えにきて一緒によろめいた。それにしてもどういう風の吹き回しなのだろう。
「大丈夫ですか」
「はい、ありがとうございます。その……ありがたいのですが……遠慮します。お金もないですから」
「そういうことなら出しますよ」
「それは……申し訳ありませんので、本当に大丈夫ですよ」
「昼からも午前と同じような作業が続くと思うので、しっかり食べておいた方が良いかと思います」
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