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数日後の夜、勤務を終えた宮下と丹波は繁華街を歩いていた。彼らの報告書は極秘扱いとなり、二人は守秘義務宣誓書にサインさせられた。
丹波は憂さ晴らしに飲みに行こうと言ったが、宮下はその気になれず駅の近くで別れた。
宮下のすぐ横で、光る刺繍の入った布が舞い上がり、彼女を身構えさせた。だが、それは通りすがりの若い女性のショールが突然の風で舞い上げられただけだった。
宮下ははっとした。最後のあの時、マリヤは確かにこう言った。
「私たちは単なる観察者なのだ」
宮下はつぶやいた。
「一人だけじゃないのかもしれない」
そして飲み屋街へ歩いていく丹波の背中に向かって心の中でつぶやいた。
気を付けなさい。あなたの隣の家に住んでいる知り合いが、宇宙から来た観察者なのかもしれないのだから。
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