迎え盆

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 暗くなり、みんなが帰ってしまった頃、お母さんがお迎えに来てくれた。  ぼくはもう小さくないんだぞ、と思ったものの、やはり少しうれしかったので、いちおうありがとうと言った。  お母さんはむかしに比べればずいぶん楽になったのか、おだやかな顔をしている。  病気だったころは、お母さんは毎日、病院のベッドでうんうんうなっていた。  お父さんは「お医者さんの見立てが間違っていたんだ」と言っていた。  お母さんはずっと「大丈夫だよ、大丈夫」と言っていたけれど、大丈夫じゃないのは家族みんなが分かっていた。  結局お母さんは、白い骨になってお墓の中にしまわれていった。  今年のお盆の片づけは、ぼくひとりで行った。  もう高校生なのだから、それくらいなんてことはない。寝っぱなしでいたほうが病気が悪くなるものだ。  迎えに来てくれたお母さんには、咳をこらえつつ、まだ行かないよと言って、縁側に並んで二人で盆菓子を食べた。  砂糖のかたまりがほろほろとくずれて、縁側から庭に落ちていった。  幼稚園に通っていたころ、時折ここで、庭のひまわりや(にれ)を見ながら、お母さんとスイカやとうもろこしを食べた。  みんなと一緒に食事をすることがあまりなく、食事の支度や片付け、そのほかの家事が一通り終わってからものを食べていたお母さんの気持ちが、家の中ですっかり家事役になった今の僕には少しわかった。  そっちはどうなのとお母さんにきいたら、まあまあだねと答えた。これはなかなか居心地がよいとみえる。
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