迎え盆

2/2
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
 いきなり、妹が台所のほうから、もう盆菓子を食べている、とぼくをとがめて声を上げた。  僕の隣にはもう誰もいなかった。  お母さんは甘いものが苦手で、砂糖のかたまりなどは、本当はあまり好きではなかっただろう。  送り盆の前に、明日あたり、イカの塩辛でもこさえようか。  ぼくはお母さんと同じ病気になってしまったけれど、今ではこれは、治る病だ。  病でも家のことをしたがったお母さんの気持ちも、今は分かる。生きていくには生きがいがいる。  お父さんはどこ行った。  また畑の裏で泣いているのか。  お父さんに明日(あす)はすき焼きを炊いてもらおう。  塩辛は、お彼岸でよかろう。 終
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!