ある夜1

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ある夜1

題1.男は必ず浮気をするのか 「絶対するね。てかしないやつなんていねーよ。なぁ相棒?」 「絡むな酔っ払い」 都心のど真ん中に建つとある高級アパートに、貧乏大学生と家主の金持ち大学生が飲んでいた。 育った環境も学部も交友関係も接点の無い2人だが、たまたま同じ大学で、たまたま同じサークルに入った。しかし滝谷には仲良くなったきっかけが思い出せないでいる。 もとより司のような人間と付き合う事は皆無だった。我が家のモットーは【節約】。なんとか標準値と呼べる生活水準は維持していたものの、大学に入ることなどは滝谷が実力で学費全額免除の特待生枠を勝ち取っていなければ確実に不可能な話であった。 それでも働き手がいなくなることは家計簿に打撃を与えるため、生活費は自分で全て稼ぎ奨学金を実家に送っている。一方の司はといえば、この豪華な住居が全てを物語っているように金持ちのお坊ちゃんである。前に一度、全身に身につけているものの総額を聞いた滝谷は、しばらく司が歩く万札に見えていたぐらいである。 そしてやはり司はお坊ちゃんで。滝谷の話をどこで嗅ぎつけてきたのか、何時の間にか好奇心丸出しで滝谷に近づき、持ち前の天真爛漫さでするりと入ってきた。 そう。いつからだとかきっかけだとかでは無いのだ。何時の間にか滝谷の家に入り浸り、滝谷の隣を歩き、酔いつぶれて滝谷の運転する自転車に跨って家に帰っていた。彼等はいつからかタッキー&司という非常に微妙な愛称で呼ばれるコンビになっていた。
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