マック

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マック

    マック。  僕には好きな人が居た。  彼女とは、中学の頃から一緒だった、高校に上がるタイミングで告白しようと、  手紙まで描いたけど、結局卒業式が終わっても何一つ話すことさえ出来ないままだった  彼女と同じ高校に行こうとも思ったが、彼女は県内でも名の知れた頭の良い高校を狙って  いた。  僕はそんな高校に行けるほど頭も良くなく、どんなに頑張っても中流の高校だ  僕は諦め、地元の偏差値も低い学校に通う事にした。    それから、お互い別々の高校で気持ちを伝えることどころか、話すらできないまま  離れ離れになって、後悔と寂しさを引き摺りながらも、高校生活を送っていた  それから一年、時々彼女の事を思い出しながらも忘れようとしていた。  そんな時に、ある日の学校帰り小腹が好き、無性にマックのポテトが食べたくなり  数ヶ月ぶりに、駅を出た所にあるマックに寄った。  僕は普通に、並びながらメニューをただ見ていた。へーこんなの出たんだ。  そんな事を思いながら時間を潰していると、いずれ僕の番が回ってきた。  僕は、ポテトだけだと足りない気がして、チーズバーガーのセットを注文した。  店員さんが「はい。はい」と注文を普通にとっている時、僕は無性に懐かしさを感じ、  お会計の時、顔をチラッと見る、そして一度顔を逸らし、僕の身体は無意識に二度見をし  た。僕は目を疑った、今目の前にいる店員は彼女だったのだ。  僕思わず、「え、あ!あー」と少し大きな声を出してしまった。  彼女はその声にビクッとして、僕を見て、彼女も同じ様なリアクションをした。  僕がどうしてここに居るのそう言おうとすると、  彼女は指を手に当て「シーッ」としたため、僕は無言で頷き、番号札をもらい。   隣の3人程が並ぶ列に並んだ、僕は未だ驚きを隠せず、少し息を荒くしていた。  するとそんな僕を心配した、後ろに並ぶおばちゃんが「あんた大丈夫?汗凄いよ?」  僕はたじろいながらも「え、ええ大丈夫です。」  おばちゃんはそんな僕を見て、心配そうな顔をしながらも「なら良いんだけど」と呟いた  僕は焦りながら、汗を軽く拭いて息を整えようと、静かに深呼吸をした。  3回ほど深呼吸をし、心と身体を整えた。  するといずれ彼女に呼ばれ、僕は少しあたふたしながらも、  チーズバーガーを受け取った、その際彼女は、「久々だね。時間ある?」そう聞いてきた   ため余計にあたふたしながら、「うん。全然いいよ。」  そう話すと「じゃあもう少しで上がるから、少し食べて待ってて」  僕は「おけ!」笑顔で返事をし、僕は席に向かった。  僕はウキウキで近くの空席に座り、   すぐさまポテトを食べ出した。  今の僕にはこのポテトの味すら殆ど分からないほどに気分が上がっている。  それもそうだ。僕はこの一年彼女と何処かで会える事を望んでいたが、  今に至るまで会えずに寂しさだけを募らせながら、この一年過ごしていた、  そんな僕が、ようやくこんな所で彼女と偶然にも出会えたのだ。  今だけは心から言える。神様ありがとう、僕のご先祖様ありがとう、この世の全てにあり   がとう。そんな空想をしていると、フッと冷静になり、今の自分の馬鹿馬鹿しさに笑けて  きたしまった、  僕は何故だか完全にツボに入り、「クックックク」と必死に口を押さえながら  一人机に突っ伏し爆笑していた。笑っているとふと、彼女の顔が頭に浮かび、  こんな姿見られたら、確実に変な奴だと思われると、僕は突然笑うのを辞め、彼女の方を  みる。彼女は普通に接客をしていた。良かった、見られてはいない様だ。  僕は再び、軽く深呼吸をし、ポテトを食べ始めた。  彼女と話せる。何を話そうか、そんな事を考えていると少しニヤけていた。  すると、突然後ろから肩を叩かれた、僕は彼女が来たんだ。  僕がおう!と言おうと後ろを振り返った瞬間声を伏せた。  そう肩を叩いたのは、彼女ではなくさっきのおばちゃんだった。  おばちゃんは、「ね?本当に大丈夫?」  僕は、「あ!ええ勿論。」そう返すと、  「なら良いんだけどねー」と言い、僕の隣の席の長い椅子に座った、  おばあちゃんは、「あなたなんかあったの?」  僕は完全に冷静になりながらも、彼女をチラチラと見ながら、「大丈夫ですよ本当に」  そう言うと。  おばさんは何かを察した様に、「あれ?もしかして」  何か少しやらしい顔をしながら、  「君、恋してるのね?」と聞いてきた。  僕は咄嗟に「いやそんな訳、、」というと  話を割って、「いいのよ、あそこのレジ打ってる子でしょ」と少しニヤけながら言ってき  た。僕はそれを聞き「え、なんで」と思わず溢してしまった、  するとおばさんは「だってあなたずっとそっちをチラチラ見てるから、それじゃあ丸わか  りよ〜」僕はそう言うおばさんに少し腹が立った。  が、それと同時におばさんの観察力の鋭さに恐怖を感じていた。  この人は一体、探偵なのか?それともおばさんはこう言うもんなのか?  このおばさんはきっと只者じゃない、僕が嘘をついた所で敵う相手じゃない、  このおばさんは只者じゃねぇ。  そんな中おばさんは話しを続けた  「あの子はきっと良い子よ。」  僕がなんでわかるんですか? そう聞くと  「私よくここに来るんだけど、まあだからこんな体型なんだけど。」  僕は真剣だった為に、頷いた。愛想笑いさえできないまま、  おばさんは一人で滑り、寂しそうにしながら  「まあ、そんな事はよくて…。そう前に来た時に、私が冗談を軽く言ったら、笑ってくれ   たのよ」  僕は、ただ聞き続けていた  するとおばさんは、  「まあってだけの話だけどね」  僕は考えた、これで終わりなのか。それともこれも冗談なのか。  いや待て、このまま終わりな訳が、だが一向に無言のままだぞ  なんだこの間、一体何が待っているんだ。  こんなに間を開けてまで一体何を、まさかクリーム砲。いや待てそんな筈がこのおばさん  はただの素人、そんな仕込みある筈が  そう一人で考えていると。  おばさんは、「まあ、きっと本当にいい子よ。私の目に狂いはないわ  だからあなた大事にしなさいね」  僕は完全に間をスルーしようとしている事を察し、先程の不可思議な出来事を忘れ。  おばさんと普通に話をした  「そですよね。でもまだ久々にあっただけで特に何もないんです。」  そう話すと  「あらそうなの、じゃあまだ早かったわね。でも好きなんでしょなら頑張りなさいよ。」  そう言いおばさんは時計を見て、用事があるからと  小さく手を振り、去っていった。  僕は、静かにお辞儀をした。  僕は完全におばさんが見えなくなるのを確認してから、少しため息をした  やけに疲れたこの感覚はまるでノンフィクションを見終わった時の様である。  疲れはあるものの、あのおばさんのおかげで少し冷静さを取り戻せた。  僕は一息つきながら、  ポテトが未だ少しカリカリな事に驚きながら、  ふと、レジを見た。  そこに彼女の姿がない。僕の心はまた舞い上がり、彼女が今から来るんだと、  少しドギマギしながら、話す事を考えていた。   妄想を膨らませて行くたびに僕の鼻の下は伸び、体に少しの緊張が走る。  そしてもう一度レジを見ると、奥に彼女の姿が見えた、僕は少し残念に思いながらも、  しょうがないよなとはやる気持ちを落ち着かせ、  ただただ、食べ進める。何故だか退屈なはずの僕の頭には爽やかな音楽が流れ、  その曲の名前すら、思い出せないが、ただその曲を口ずさんでいた。   そんな事をしていると、やたらと寂しいような、嬉しい様な、キュッと心と身体が  締められる様で、僕は突っ伏したくなりながらも、この状況の幸せさを噛み締めていた。
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