1-3 人生最後のデートだと思っていたのに/必要とされたかった

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悩んでいてもしょうがない。 悔やんでいても、何かが変わるわけない。 そう、心の中で呪文のように唱え続けた。 数日は凹んだが、思いっきり泣いた後、頑張って就活を仕切り直す。 その日から、就活用に作ったSNSを見るのを止めて、就活を通じて知り合った人とも距離を置いた。ブロックをするまでの勇気はなかった。 卒論の締め切りとも戦った。 就職活動と並行して勉強した、マーケティングの新しい理論について書いた。 ゼミの教授からは 「あなたは絶対企業に必要とされる人材になるわ」 と絶賛してもらえた。 私はその時、苦笑するしかできなかった。 落ちては受け、落ちてを繰り返し、お祈りメールをもらうのに、耐性もついた。 そうやって、どうにか大学を卒業する直前に内定をもらうことは、できた。 比較的有名な企業の名前がついた会社だったので、内定の連絡を受けた時は嬉しかった。家族も、喜んでくれた。 だけど私は、そんな苦労をして入社した会社を、たった2ヶ月で辞めてしまった。 理由はパワハラ。 研修中、先輩から何をするにも 「使えない」 「グズ」 「給料泥棒」 など、延々と言われ続けた。 最初は自分が悪いんだ、自分さえ努力すれば良いんだと踏ん張ったが、会社に行けなくなった。 人事部や上司にあたる人からは、 「これくらい、新卒なんだから当然だ」 というような事を言われたが、親の勧めで受けた医者からは、正式にドクターストップがかかった。 その時の診断書を武器にして、私は後先考えずに退職願を出した。 この時の体重は、50キロ。 食べられなくなった分、痩せた。 それだけは、嬉しかった。
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