1-2 人生最後のデートだと思っていたのに/怪しい誘い

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「森山さん。ちょっといい?」 何の前触れもなく突然のこと。 リモートワークで使っているチャットツールで話しかけてきたのは、佐野美夜子さん。 (佐野さんが私なんかに話しかけるなんて、珍しい……何があったのかな……) 佐野さんは私にとって、普段全く話さないタイプの女性。 今年30歳になるらしい。 いつも「今年までに結婚できないと〜30歳になっちゃう〜」と、独身男性との会話で言っているのを、聞いたことがあった。 佐野さんは、ファッション雑誌から抜け出たような、整った顔立ちとスタイルを持っている。 そのため、とにかく男性人気が高い。ものすごく。 彼女に恋焦がれる男性社員達が、いつのまにか抜け駆け禁止のファンクラブを作っていた……という話も聞いたことがある。 少女漫画みたいな話、本当にあるんだ……と、私にとっては他人事のような出来事だ。 かつては、自分にそんなことがあったらどうしようなどと、贅沢な夢を見たこともあったが……羨ましいとすら、もう今は思わない。
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