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八月十三日。
治男おじさんちにはたくさんの人が初盆のお参りに来た。
治男おじさんと千佐おばさんはお客さんにかかりっきりだ。
船作りはのんびり進んでいる。
思い出したように来る圭くんの友だちが、ちょっとずつ手伝ってくれるからだ。
けれどもかんじんな圭くんは話に夢中になって、手が止まっている。
夕方にはお墓参りで、圭くんはぼくよりいっぱい花火をして喜んでいた。
子どもみたいな人だと思う。
治男おじさんはカップ酒を次々に飲んでいる。
ご先祖さまのためだって言ってるけど、あれは自分のためだと思う。
「今日はね、お盆の初日でご先祖さまと、この一年間に亡くなった人ばお迎えするとよ。お墓でもこうやって家紋の入った提灯ばつるしてね。家の玄関にも提灯つるして、家の中に燈籠ばかざって、ご先祖さま、おじいちゃん、ここが家ですよーって教えるとよ」
千佐おばさんがわかりやすいように説明してくれた。
ぼくは、持っている研究ノートに書き込んだ。
「うんうん。色々写真ばとってやるけん、あとでまとめんね。もう、圭はちょっとでも真くんば見習えばよかとに」
圭くんはまだ花火を振り回していて、千佐おばさんの言葉を少しも聞いていなかった。
家に帰ると、治男おじさんはすっかり酔っぱらっていて、ぐうぐう寝てしまった。
圭くんは腰を上げた。
「帆の方先に済まそうか。マコ、そっちの布の端っこ押さえといて」
圭くんは、下書きもなく、筆でさっと布に『西方丸』と書き込んだ。
「これ、どういう意味?」
「極楽はずーっと西の方にあってな。そこば西方浄土って言うとさ。精霊船が、ご先祖さまのおる西方浄土に無事に着きますようにって願って書く」
圭くんはまじめな顔になった。
「精霊船ば作る時にはね、亡くなった人ば迎え入れて話ばするとさ。どげん船にしよっか。好きやった物かざってやろうな、迷わず行かんばぞーとかね。長崎のもんはこの時期、他の所よりちょっとあの世の人の近くにおるとかもな」
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