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八月十四日。
船体に波のもようの入った布を貼ると、だいぶ精霊船っぽくなった。
ぼくは圭くんに、かざる提灯を手渡していく。
圭くんは提灯に電球を取りつけた。
「ろうそくの方が雰囲気はよかけど、燃えたら困るけんな」
「圭ちゃん!うちのも頼む!」
「お経ば書いてくれん?」
近所の人がちらほらと布や紙を持ってやって来た。
「まぁだ自分とこんとも仕上がっとらんとになあ」
圭くんは文句を言うわりには嬉しそうに手伝ってあげている。
「こげんとはここのじいちゃんがいつも書いてくれよったねえ。圭ちゃんがこの仕事継いでくれてよかったばい」
近所のおばさんが笑いながら目元に指をあてた。
ちょっとだけ泣いているようにも見えた。
「ほんっとにわがままで困ったじいちゃんやったけど、俺はじいちゃんの字ば目標にできたけん。今でも全然追いついとらんとけど」
圭くんは鼻をこすって照れくさそうに笑った。
「マコ、仕上げよう。造花かざって」
「どがんすっと?」
「花に割りばしのついとるやろ?みよしのゴザにぷすぷすさしていけばよかだけ」
最初はえんりょしながらだったけど、だんだんおもしろくなって、ばんばんかざっていった。
「圭くん、造花余った!」
「余っても仕方なかけん、どこにでもよかけんくっつけとって」
ぼくは、写真のおじいちゃんの上にかざってやった。
おじいちゃんのつるつる頭がお花畑になった。
![f6416db3-341d-4d7d-9393-a1720c105f2c](https://img.estar.jp/public/user_upload/f6416db3-341d-4d7d-9393-a1720c105f2c.jpg?width=800&format=jpg)
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