船を出す

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あっちでもこっちでも爆竹が飛び交うから、身体中火薬のにおいがする。 ぼくは飛んでくる爆竹をよけるのがとても上手くなった。 こんな技、ふだん何の役にも立たないだろうな。 ここまでくると、もううるさいのは通り越して気にならなくなってきた。 「おじいちゃんはうるさすぎんとかなあ」 圭くんにたずねてみた。 「じいちゃんは爆竹好きやったけん喜んどるよ。昔じいちゃんが爆竹の段ボールに火つけた時は五メートルぐらい火柱上がって地獄ば見た」 それ絶対だめなやつ! おじいちゃんは写真の中でにこっと笑っている。 笑っている場合じゃないよ。 圭くんは、歩道で見物している子に、時々手持ち花火を手渡してあげていた。 あ、いいことしてると思ったら、火をつけた爆竹もばらまいている。 圭くんにしては手かげんはしているけど、あの子たち、精霊流しがきらいにならなければいいけど。 治男おじさんもお父さんも、赤い顔をして歩いている。 「おお、真、ちょっと見らんうちに大きゅうなったなあ」 お父さん。 お父さんが話しているのは治男おじさんです。 いつの間に飲んじゃったんだろう。 「ほら真くーん、こっち見てー!恰好よかよー!」 「真、こっちに立って、ほら、ポーズ!」 千佐おばさんとお母さんは、カメラを振り回しながらすごくパワフルに精霊船を押している。 二人とも、何を食べたらあんなに元気なんだろうか。 今何時ごろかな? ぼくは頭がぼーっとしてきた。 そろそろ家に帰りたいな。 「おい、マコ!流し場着いたぞ!ようがんばった!もうちょっとやけんがまんしとけな」 圭くんが乱暴にぼくの肩をたたくので目が覚めた。 bc9ecd25-766e-4862-b7cc-dd8748d591d4
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