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流し場には精霊船が次々と到着している。
奥の方では重機が動いていて、順番に船を取り壊していた。
ぼくはそのようすを、何とも言えない気持ちでながめた。
耳の奥でまだ爆竹が鳴っている気がする。
「圭くん、船はもうこの場で壊すと?」
「精霊流しちゅうても海に流すわけにはいかんけんな。ほら、進め。もうすぐうちの番やけん」
おじいちゃんの写真や提灯、のせていたものをお母さんたちが手早くまとめていく。
がらんとなった精霊船は、おじいちゃんの船じゃなく、別のものに見えた。
「小そう見えるね」
さびしく思いながら見上げると、圭くんは笑っている。
「そうやね。でも笑って送れ。じいちゃんはマコが送ってくれて嬉しかって言いよるよ」
ぼくは笑った。
ちょっとむりやり。
ばりばり、ばきばきと音がした。
みんなが係員さんに頭を下げて、手を合わせている。
おじいちゃんの船は、みるみるうちに形がなくなっていった。
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