僕の最期(コンテスト用)

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「なんで…こんな…」 マホが声を詰まらせた。 同時に、俺の手を握る彼女の手に力が篭る。 「なんで、こんなになるまで黙ってたのよ!」 その表情は、悔しげに歪んでいる。 ああ、そうか。 もう、そんな…傍から見てもオカシイのか、俺。 自分ではもう時々視界がブレたりして、いよいよヤバイなって自覚はあったんだけど。 ひょっとしたら全部勘違いで、いつの間にか治っちゃったりするんじゃないかって何処かで思ってて、ギリギリまで言えなかったんだ。 「いつから…なの?」 目が真っ赤。不謹慎にも可愛い、なんて思ってしまう。 「……36時間くらい前かな」 「そんな前から!?」 呆れた、という様に、声を荒げるマホ。 そう。 気づいた時すぐ言っていれば、まだ傷は浅かったかもしれない。 もう俺らは今、「ゴール直前」。 俺だって…俺だって悔しいんだ。 「ゴメン…、 俺、怖かったんだ。 もうアンタなんて要らない、代わりはいくらでもいるからって言われるのが…」. 「バカじゃ…ないの!?」 言葉の激しさに似合わず、若干涙声だ。 「代わりなんて、いるワケないじゃない! アンタがいなかったら、こんな世界、消えちゃうようなものよ!」 「はは、大げさだなぁ」 力無く笑う自分。 「なぁ、マホ。 最近よく思うんだ。 俺らってさ、自分の意思で行動してるように見えて、実はもっと大きな抗えない存在によって動かされているんじゃないかって。 だから、俺がこうなって、そして終わりが近づいているのも仕方が無いことなんだ」 それを人は運命と言うのだろうか。 「終わりだなんて…」 「いや、もうここまで来たら、早く終わらせないと。 俺を蝕んでいるものが、君らにまでうつってしまうのは、時間の問題だ」 そう、このままじゃ皆にまで被害が及ぶのは目に見えてる。 大いなる存在は、きっとここらで幕引きをするんだ。 だってほら、いつも視界の外で陽気な音楽を奏でていた楽団も、今は手を止め神妙な面持ちでこちらを見ている。 「ユウ…」 いつも気が強くて、情けない俺を叱咤激励してきた彼女が、涙を堪えるような表情のまま、更に手に力を込めた。 「泣くなって」 「泣いてない!」 すっかりいつもと立場が逆転している。 「なあ、マホ… 俺、約束するから」 ふっと顔を上げる彼女。 赤い目が、「何を?」と言っている。 「もし俺が消えてしまったとしても… 生まれ変わっても、必ず俺は君に会いに行く。 絶対探し出して、迎えに行くから…待ってて」 彼女の目からボロボロ涙が溢れた。 「なっ、何よう! 最初はあんなに弱っちかったアンタが、そんな大それたこと言い出してっ」 「弱っちかったのは、お互い様だろ」 そう、遠い昔出会った頃は、俺らは弱い弱い人間だった。 でもこうして、ずっと一緒にいて、ずいぶん強くなったよな…。 「だから…待ってて」 「分かった…」 目だけでなく頬も赤くして、コクンと小さく頷く彼女に、言いようのない感情が溢れる。 ああ…身体が自由なら、今すぐこの腕で抱きしめるのに。 でも、どうやらここらで「ゲームオーバー」みたいだ。 「その気配」が、頭上に迫るような感覚。 あ… 「ユウ!」 視界が… 「ユウ!嫌!」 マホの顔が… 「やだぁ…」 歪んで… ……… ……… ガチャリ。 ーーーーーーーー ーーーーーーーーーーーーーーーー
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