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そしてその男性に初めて宅配してから5年経った頃のコト。
宅配を受け取ってくれたのはどこか見覚えのある女性でした。
「どうぞ」と渡すと「ありがとうございます」と微笑んでくれました。
それは間違いなく、あの時の女の子です。
あれから7年経って再会できたのがなんだかとても嬉しくて、泣きそうでした。
立派になった彼女は、それを抱えて家の中に入っていきました。
僕がこの家に配達する荷物が、年々重くなっていると感じました。
それまで何を配達しているのか気にもしていませんでした。
何か器具でも入っているんじゃないか、そんな重みです。
その1ヶ月後もまた、彼女が出てきました。
すっかり顔見知りになって、彼女と会うたびに心が明るくなります。
でも、だんだんとそんな彼女の笑顔は、曇っていきました。
あの時の曇り方とは訳が違いました。
以後、僕が宅配すると、決まって受け取るのは彼女でした。
もう、あの男性が僕の前に現れることはありませんでした。
前よりも、その家は寂しげに見えて、彼女も少し悲しそうでした。
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