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僕は宅配屋です。
僕には、気になるお家が1つあります。
それは、ひっそりと暮らす小さなお家です。
僕は月に1回くらいの頻度で配達しにお邪魔します。
初めてそこに配達した時、インターホンを押して出てきたのは女の子。
多分、その家の娘なんだと思いました。
「どうぞ」と渡すと、「ありがとうございます」と軽くお辞儀してくれる、
優しげな女の子。高校生、大学生くらいでしょうか。
1ヶ月後、また配達しに来ると、出てきたのは同じ女の子。
僕が「これ、重いよ」と問いかけると、「大丈夫ですよ」と返事してくれました。
そのまた1ヶ月後も、そのまた1ヶ月後も、その女の子が受け取ってくれました。
渡すたび「ありがとうございます」と労ってくれるその笑顔が、
いつの間にか僕の楽しみになっていました。
でも、その笑顔は段々と曇っていきました。
ある日、受け取ってくれたのは男性。
初めて配達してから2年が経っていました。
その男性は50代後半くらいで、これまた優しそうな方です。
「どうぞ」と渡すと、「ありがとうございます」と言って家に入っていきました。
その1ヶ月後、それまた1ヶ月後、と時は流れていきました。
しかし、その男性は段々と力なく、そして足取りも重くなっていきました。
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