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泣き疲れたナシオはフードを被ったまま眠りについた。ためこんでいたものを吐き出したせいか、隣からは心地の良い寝息が聞こえてくる。ヒロはそっと布団から抜け出し、反対側を向いたナシオの顔を見ようと、静かに畳の上を移動する。
「ナシオ……」
ヒロがそっとフードを取り払うと、その下には穏やかな顔で眠るナシオの姿があった。
「かわいい」
この安らかな顔をずっと見ていたい。ナシオを取り巻く様々な事柄をすべて取り払って、穏やかで平和的な日常を過ごしてほしい。そしてできることならば、このままずっとナシオの隣に、友人として――友人として。
「そうだ」
ヒロはすっくと立ち上がり、枕元で充電をしていたスマートフォンを手に取り、再びナシオの元へ戻る。それからカメラモードを起動し、フレームの中心にナシオの寝顔をとらえる。
「友人として――ならいいよね」
シャッター音が聞こえてもナシオは目を覚まさない。ヒロは保存ボタンに人差し指を伸ばし、ためらいつつもそのボタンを押した。
了
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