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昼休み開始のチャイムが鳴ると、校内は一様にざわめき出し、次第に昼食を終えた生徒たちが校庭でサッカーやバレーボールに励み始める。中庭のベンチには楽しげにお喋りの花が咲き、まだぎこちない新入生たちも笑顔を浮かべる。共に食事をとることのできる昼休みは、同級生と親しくなるのにうってつけの時間だ。
「納得いかん」
そんな時間、ぶつぶつと隣で文句を垂れる愁を他所に、御子柴大和は手元のカレーパンにかぶりつきながら適当に応答する。
「しゃあないって。運命なんだよ」
「はあ? 運命? 冗談じゃない」
頓狂な声を出して愁は行儀悪く箸を持ったまま右手を振る。
「あんな裏表女と運命感じてたまるかよ」
「よく人のこと言ったなあ」
大和は呆れながらもどこか人懐こい表情で笑った。
御子柴大和の名前の通り、どこか和犬の子犬のような愛嬌のある彼は、愁が唯一本音を話す中学時代からの友人だった。あまり背の高くない愁と目線の高さもさほど変わらず、彼はどこかおっとりした印象を相手に与える。今も愁の苛立ちなど気にも留めず、もぐもぐと口を動かしながらマイペースに「うまー」と感想を漏らしている。
人気のなく日当たりの悪い校舎裏のさびれたベンチで、二人は昼休みの時間をつぶしていた。定番の屋上はそもそも鍵が開いていない、中庭のベンチは既にいっぱいだ、狭い教室だと息が詰まる。そういって見つけた場所だった。
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