4人が本棚に入れています
本棚に追加
1
煌々とライトに照らされるスタジオ内。人や機材の熱気の中、ひときわ大きな声が上がった。
「これにてクランクアップです! お疲れ様でした!」
その場にいた全員から、わっと拍手が上がる。長い撮影がようやく終わりを迎え、作品制作も大きな区切りとなり、疲労困憊していた仕事人たちも一様に笑顔を浮かべていた。
やがて、廊下の奥から色とりどりの大きな花束を持ってスタッフが現れた。それを受け取ったのは、この中でも著しく年若いまだ十五歳の二人だった。
「短い間でしたが、お世話になりました!」
少女がにこやかに笑って言う。
「とても勉強になりました」
少年も、疲れを感じさせない爽やかさで言った。
そして、ありがとうございましたと周囲の大人たちに礼を言い、皐月結衣と支倉愁は深々と礼儀正しく頭を下げた。大きな拍手が起きる中で、顔の埋もれてしまいそうな花束を抱きしめ、二人は視線を合わせるとどちらからともなく笑い合う。声がなくとも二人にしかわからない会話を交わしているようにも見え、微笑ましく見守る周りは労いの言葉を各々口にした。それに対しても二人は律儀に礼を返し、一人一人きちんと対応する。
「愁くんと皐月ちゃん、本当に仲良しよね」
「見てるだけで青春思い出すよな」
演者やスタッフがそうした感想を口々に述べる現場を、二人は並んで後にする。今回クランクアップした、青春映画の主役二人。圧倒的な演技力を誇り、理想のカップル像を見せる二人は、今やそろって立派な有名人だった。
最初のコメントを投稿しよう!