アネモネ

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 雨の後は蝉が鳴く。よほどモテたい数匹が鳴いて寂しく感じる。今の自分には、その寂しさすら感じ取れないほどの放心状態であった。  彼女との出会いは、趣味のときに知り合ったのだった。趣味というほど崇高なものではない。ただ自分の小さな楽しみの時というのが正しいだろう。その時に出会い意気投合し付き合った。彼女は、嘘をつかない笑顔の素敵な人だった。  付き合って3ヶ月だったろうかよく覚えていないがまぁ今日のことである。彼女から遊びに誘われた。映画を観て食事をする。普通のデートである。映画はラブストーリーで最後には別れてしまうという映画だった。見終わった後に彼女と『別れる時は笑顔でわかれよう』という会話をした。帰りに彼女を家に送るために一緒に帰る途中雨が降って近くの神社に逃げ込んだ。そこで最後の会話をした。 「嫌だな。夕立なんて。突然降るし、雨は強いし。」 「そうだね。今日言おうとしてた事があるんだ。」 「どうしたの?」 「私好きな人ができたんだ。だから、別れてほしいの。」 自分は悲しかった。そして彼女の別れの言葉に対して悲しいとしか言い表わせず言葉を出しづらい自分に腹がたった。 「あれっ、泣いてるの?最後は笑おうって話したばっかじゃん。」 きっとわからなかったが涙が出ていたのだろう。 「いや、これは涙じゃないよ。雨だよ。雨で濡れてるだけ。」 「そっか。ごめんね、わがままで。」 そこから雨が止むまで息苦しい空気が漂った。 いずれ雨が上がって彼女は、 「雨、止んだみたいだね。じゃあね」。 彼女は約束どおり晴れ晴れとした顔で去っていった。  最後に嘘ついていくなよ。雨はまだ降っているじゃないか。  
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