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「ミハイさん、いらっしゃい。ヤタのはいつもの冗談なので、手を放してやってください。」
吸血鬼のミハイさんは、確か投資家というふれ込みだったはず。
いつから土地の買い占めに走った。
しかも、俺の店を残して周囲をぐるりと買い占めやがって。
そのうち地上げ屋吸血鬼と呼ぶぞ。
「いつも冗談しか言わん口ならば、縛り付けてもよいのではないか。」
物騒なことを言うな、吸血鬼。
閉店と同時にヤタは高天原に戻って全部報告しているんだぞ。
まあ、ヤタの報告を聞いたタカさんたちが怒って文句を言いに来たことは一度もないが。
「ミハイさん。今日はたぶんお客さんはお二人ですよ。」
「む。」
「買い出しの時に油揚げが。」
「またあの狐か。店内が獣臭くなってかなわん。店の外に油揚げをぶら下げておけばよかろう。」
そんなこと出来るか。
ここは居酒屋、来てくださるお客さんに料理やお酒をお出しするところだ。
これがミハイさんの平常運転の状態。
「ギャア!この吸血鬼め!悪の店主とともに滅んでしまえ!」
誰が悪だ。
そう思っていると、俺とまったく同じことを口に出してくれる人が登場。
「誰が悪だって?ふうん、タカは面白い教育をしているねえ。」
道とは反対側、路地の奥の闇の中、ぽっぽっと灯りがともったかと思うと、すうっと白い腕が伸びてきて、ミハイさんと同じようにヤタを掴んだ。
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