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一つ空けてウカさんも座る。
俺はウカさんにつき出しと、常温の日本酒を出した。
冷酒のように涼し気な水色の酒器に入れて前に置く。
ミハイさんにはワイングラス。
吸血鬼であるミハイさんは、この店ではフルボディの赤ワインしか口にしない。
表のラベルを見せ、確認してもらってからグラスに注ぐ。
「うむ。おまえの手から注がれた酒は、どのような安酒であってもかぐわしく芳醇な香りを放つ。」
今夜も寝言が絶好調だな、吸血鬼。
まず、安酒って言うな、原価10万だ。
年々こいつ用に用意するワインの金額が上がっているのに、いくら上げても安いと言われてしまう。
あと、俺の手に特別な匂いはついていない。
加齢臭かと思うじゃないか、地味に傷つく。
「うーん・・・」
日本酒を一口含んだウカさんが、何だか落ち着かない様子でもぞもぞしている。
え、こっちも何か味や匂いが変だとかってことだろうか。
「すいません。その酒、お気に召しませんでしたか。」
これまで何度も出したことがある銘柄なんだが、今日のウカさんの気分じゃなかったんだろうか。
「ああ、いや、大丈夫、酒は十分美味いんだ。」
「当然だ!泉実が供するものに不味いものがあるはずがなかろう!」
赤ワインしか飲まないやつが言うな。
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