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「それでね、お声がけしてみたらね、百々ちゃん。なんと、あなたのお祖母ちゃんが東京に出張に行ったときにお世話になったお店の店長さんだったのですよ。」
「えっ!お祖母ちゃんが!?」
ここで祖母が出てくるとは思わなかった百々は、思わす驚いて大きな声をあげてしまった。
「あなたのお祖母ちゃんが県庁勤めをしているときに、出張で東京に行ったのですって。あの高見さんもご一緒に。」
「あー、高見のおじさまも行ったんだ。」
「あの子一人で行った方がどれほどストレスが溜まらなかったでしょうにねえ。」
高見は現在、百々が住んでいる市の市長である。
しかし、次期県知事選に出るために任期満了前に辞職するという情報が最近新聞やローカルニュースで流れている。
いつもにこやかに微笑み穏やかそうな外見や人当たりのいい応対、ウィットに富んだ話術、市民に分かりやすく政策を伝える技術などで、非常に人気が高い。
知事選に出れば、間違いなく当選確実と今から噂されている。
だが、この高見という男の本性はそんなものではなかった。
なにしろ亡くなった百々の祖母一筋な男で、生前は祖母の元筋金入りストーカーでその後筋金入りの忠犬もしくは下僕に転身した、妙な男なのだ。
祖母が亡くなってもその忠義は変わらず、百々が孫に当たるがために力にはなってくれるがあくまでも亡き祖母への忠義建てのためであり、百々本来の味方とは言いづらい。
「おばあちゃんと高見のおじさまが、その居酒屋さんに行ったのね。」
それはさぞかし、店主の人も困惑というかええと・・・
百々が言葉に詰まっていると、一子がふうとため息をついた。
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