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「そうなのよ、百々ちゃん。何だかあなたのおばあちゃん、突飛な注文をしてきたみたいで、随分ご迷惑をおかけしてきたみたいなの。」
「突飛な注文?」
「なんでもそのお店は、お客さんの好みを聞いてお酒やお料理を出してくれるのですって。なのに、とても良心的で料金もお安いんだそうですよ。」
百々は、亡き祖母がどんな注文をしたのか、考えるだけで冷や汗が出た。
百々の祖母自体は突飛な人間だったのではない。
非常に勤勉、まるで公務員になるために生まれてきたかのような、仕事に対し一切の妥協をせず、市民県民のために働くような人だったという。
だから、仕事の関して不正や不適切なことを見つけると、吠えるがごとく相手に向かっていったのだとも。
もちろん、百々も小さい頃に可愛がってもらった記憶があるが、猫なで声でデレデレと話しかけてくるような感じではなくいつもきりりとした部分を崩さない人だったように思う。
そんな祖母が訪れた店。
そして、尊敬する曾祖母が会ったという店主。
どんな人なんだろうと、百々はちょっと興味をもった。
「ね、百々ちゃん。私の代わりにご挨拶してきてくれるかしら。お年賀いつもありがとうございますって。」
「うん、いいよ、大おばあちゃん。ただし、天空さんがお休み取れたらね。」
「ほほほ、大丈夫ですよ。あと、旅費は言い出したのですから私が払いますからね。」
「えっ!いいよ!だって私と天空さんの新婚旅行だもん!」
「いいのよ、百々ちゃん。ちょっとは孫に甘くさせてちょうだい。今まで修行だなんだってあなたに大変な苦労をかけてきたのですもの。私があなたに教えられることはもうなくなり、ようやく普通のひいおばあちゃんとしてあなたに接することが出来るのよ。可愛いひ孫にお小遣いをあげたい気持ちを汲んでちょうだいね。」
「大おばあちゃん・・・」
一子の弱気ともとれる発言に、百々は断ることが出来なくなってしまった。
一子から名刺と年賀状を手渡され、天空に何て言おうと困り切ってしまった。
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