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「新婚旅行ですか。あの人もたまにはいい提案をしますね。ただ、自分の知人を訪問してもらいたいと用事を押し付けることはお勧めしませんが。」
父の丈晴の言葉に、母の七恵がまあまあととりなすように口を挟む。
「旅行のついでですもの。百々ちゃんと天空さんは2日間自由に行きたい場所に行ってくるといいわ。東京は面白そうな場所がいろいろとあるから楽しみねえ。」
「でも・・・」
百々はちらりと天空の方を見た。
勝手に旅行の話を出されて気分を害していたらどうしようと。
「もし可能なら。」
「はい。」
「御朱印を集めたいので、神社巡りをさせてもらってもいいですか。」
ああ、そうだった、天空さんの趣味って御朱印集めだったと思い出し、ある意味これはいい機会なのかもしれないと百々は思った。
「もちろんです。行きましょう、神社。東京は有名な神社がたくさんありますもんね。」
「自分ばかりが楽しむのは申し訳ないです。百々さんが行ってみたい場所はありますか。」
そう言われても、百々は何も思いつかなかった。
特に東京に思い入れはない。
観光名所も、有名なところしか知らないのだ。
だから。
「それじゃあ一日目は天空さんの神社巡り。2日目は上野動物園に行きませんか。そこなら近くに博物館や美術館もあるし、アメ横も面白そうだし、何より上野駅から新幹線に乗れるから帰りもスムーズだし。」
百々の提案に、天空はこくりと頷いた。
急遽決まった百々たちの新婚旅行に一番舞い上がったのは七恵だった。
「旅行に着ていく服を買いに行きましょうよ、百々ちゃん。それと、新幹線のお席も予約しなくちゃ。せっかくだからグリーン席がいいわね。ホテルは奮発してスイートルームよね。ハネムーンですもの。ディナーも予約しましょうねえ。」
「お母さんっ、落ち着いて。」
「七恵さん、ここは百々さんと天空さんが決めるのが筋でしょう。」
百々と丈晴は、興奮気味の七恵を抑えるのに一苦労だった。
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