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皆の用意が整い、「いただきます」と声と手をあわせるのを慈乃とウタセは微笑ましく見守っていた。そこにニアが現れる。
「はい、ウタ達の分ね」
「ありがとう、ニア姉」
「ありがとうございます」
ニアから手渡されたのもまたクッキーの皿とホットココアのはいったマグカップだった。こちらは先ほど運んだものより少なめだ。
「編み物なんて大変でしょ? お疲れ様。あたしもできたらよかったんだけどね」
ニアは苦笑いを浮かべていた。どうやら料理は得意でも手芸の方は苦手らしい。
対してウタセはゆるゆると首を左右に振った。
「ニア姉はこうして美味しそうなおやつを用意してくれたじゃない。適材適所ってことだよ。それに今年はシノがいてくれるから予定より早く終わりそう」
「さすがシノねぇ。出来上がりが楽しみだわ」
「あ、あまり期待しないでくださいね……?」
三人でひとしきり談笑した後、慈乃はウタセとともにスギナの待つ部屋へと戻った。
「お、やっと戻って来た」
振り向いたスギナはラジルと遊んで待っていたようだ。
ラジルは好奇心旺盛で、慈乃とウタセが持っていたものにいち早く興味を示した。とてとてと頼りない足取りで慈乃達のもとへとやってくる。
慈乃はしゃがむと皿の中身をラジルに見せた。
「ラジルくんの好きなクッキーですよ」
「あー!」
「ラジル、嬉しそうだね」
「ニアさんが聞いたら喜びますよ」
二人で微笑み合っていると、ソファーに座ったままのスギナが疲れたようなため息を吐きだした。
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