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残されたライモ、ヨルメイ、アスキは慈乃を見上げた。
「シノお姉ちゃん、このあと遊べる?」
「絵本を読んでほしいんです」
同意を示すようにアスキもこくこくと頷く。
可愛らしいお願いに慈乃も頷きたいところだが、あいにくと今日は予定があった。
「ごめんなさい。この後は予定があって……」
「確かソニアとウィル、あとアキと聖花祭をまわるんだっけ?」
「はい」
ウタセの確認に慈乃は頷いた。
学び家で育った同い年の者にソニアが声をかけるなかで、彼女はアウィルとアキレアに加え、慈乃も誘ってくれたのだった。学び家で同じ時間を過ごしたことはないけれど、その輪に慈乃を入れてくれたことに以前の慈乃なら気後れしてしまっていただろうが、今は純粋にくすぐったく、嬉しい。話題には上ったことがあるものの面識はないアキレアに会うのも楽しみにしていた。
「なんだ。それなら仕方ないね」
ライモは素直に頷くと、今度はウタセを見上げた。
「ウタセお兄ちゃんは?」
「絵本の読み聞かせ? いいよいいよ!」
ウタセは頼られたことが嬉しいらしく、無邪気な笑みを浮かべて喜んでいた。
ライモ達のことはウタセに任せることにし、慈乃は食堂で彼らと別れ、出かける支度をするべく自室に戻った。
支度と言っても豊穣祭同様、花祭のような正装もなく、必要な手荷物だけを持って慈乃は待ち合わせ場所である三番地の街の出入り口付近に向かった。
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