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ソニアに手で示されたのは鉛白色の髪と緑色の瞳を持った男性だ。彼は慈乃と目を合わせると朗らかでひとの良さそうな笑みを浮かべた。
「はじめまして、アキレアっていいます。名前の通りアキレアの花守でもあります。ウィルくん達から話は聞いてました。会えて嬉しいです、シノさん」
「慈乃です。こちらこそよろしくお願いしますね、アキレアさん」
「あ、敬語じゃなくてもいいですか。僕たち同い年だし。あと名前もシノちゃんって呼んでいいかな?」
「はい、構いませんよ。私もアキくんとお呼びしてもいいですか?」
「ええ、ぜひ!」
アキレアは想像以上に話やすい雰囲気で、慈乃もそこまで緊張することなく挨拶ができた。ふたりの様子を見守っていたソニアとアウィルも安心しているような顔で笑っていた。
「うんうん! アキくんとシノちゃんは絶対仲良くなれると思ってたんだ!」
「そっすね。ところで、今日はどこ見て回るんすか?」
「ああ、僕も気になってた。ソニアちゃんに聞いても『当日のお楽しみ』としか教えてくれなかったし」
慈乃も今日の細かい予定は聞いていなかった。三人の視線は自然とソニアに集まる。
「よくぞ聞いてくれました!」
ソニアは胸を反らして得意げに笑った。
「今日はねー、シノちゃんが初めての聖花祭だっていうことで、私達の聖花祭の楽しみ方を伝授してあげようと思って! どう? 楽しそうじゃない⁉」
いきいきと山吹色の瞳を輝かせるソニアを慈乃とアキレアはきょとんと見つめ返し、アウィルは目を瞬かせた後ぽんと手を打った。
「つまり、いつも通りの聖花祭ってことっすか」
しかしソニアはその言い方が気に入らなかったのか、じとりとアウィルを見遣り、頬を膨らませた。
「もー、そうだけどさっ! ウィルくんの言い方つまんない!」
「え、ええ……」
「こういうのはね、雰囲気が大事なんだよ! ってことだから、シノちゃん!」
「は、はい……!」
ばっとソニアに振り向かれた慈乃は反射的に返事をした。ソニアは慈乃の返事を覇気があるものとみなしたらしく満足そうに笑って言った。
「今日は聖花祭をめいっぱい楽しもうね!」
「はい……!」
今度は慈乃も微笑んで頷いた。
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